スライドでの説明
講演会場
健康資料
胃癌の原因は「ストレス・塩・焼け焦げなど」と言われてきたが、近年ではピロリ菌原因説が大きく浮上した。特に日本のピロリ菌は毒性が強く、胃癌を含め様々な胃トラブルを引き起こしやすいという。また癌による死亡の種類を海外と比較しても、日本では胃癌の比率が高く、ピロリ菌対策は重要な課題となっている。
そうした現状を知ってもらおうと麻生区保健福祉センター地域保健福祉課は「胃がんとピロリ菌」をテーマにした講演会を開催した。講師は池内クリニック(麻生区)の池内孝夫院長。参加者は高齢者が多く約50名で、男女比は1対3であった。
感染要因と除菌の効果
ピロリ菌の感染者は開発途上国で多く、悪い衛生環境下で免疫力の弱い幼少期に感染することが多い。また感染者の親から子へと食べ物の口移しで感染するケースもある。日本でも高齢者ほど感染率が高く、60歳以上では80%以上にもなる。感染者は慢性活動性胃炎になり、胃・十二指腸潰瘍や胃癌を発症する症例もある。ある文献によると感染者・非感染者の10年間の追跡調査によれば、感染者では1246名中36名が胃癌になり、非感染者では280名中0名であった。胃癌の年間発生者数は30万人に上り、ピロリ菌除去がいかに大切か分かる。ただし除菌者が全て胃癌にならないとは言えない。ピロリ菌にさらされた胃は、その期間が長くなるほどリスクが高まっていく。早めに除菌するほど効果は高いのだ。また高齢になると除菌後、胃癌を抑制する効果に男女差が大きくなり、60代で男47%・女82%、70代では男43%・女70%という、女性にとって嬉しいデータもある。 検査方法と除菌療法
検査は内視鏡を伴うものの他に、吐き出した息を採取して調べる方法、尿や血液・便を調べるものなど色々ある。胃潰瘍や十二指腸潰瘍以外、今年より慢性胃炎の患者に保険が適用になった。除菌は1週間・薬を飲むだけであり、これで70から80%が成功する。それでも除菌できなければ2次除菌療法がある。副作用としては下痢・軟便・味覚異常・薬疹などがあり、医師と相談しながら進めたい。1時間半の講演後、参加者からはやはり薬の副作用に対する心配の質問が多く寄せられた。また除菌後に胃の活動が活発になり、胃酸が多く出て、胸焼けや逆流性胃炎の症状が出る事もあるが、薬で対処できるとの説明があった。