シニアリポーターの取材リポート リポーターが取材したイベント情報をご紹介!

川崎の農産物を”知って、買って、食べるフェア”を見る

取材日 2012年07月08日(日)

長野県富士見高校養蜂部の紹介

長野県富士見高校養蜂部の紹介

「かわさきそだち」の品評会の模様

「かわさきそだち」の品評会の模様

福島県産品のインタビューに答える

福島県産品のインタビューに答える

 食品の安全・安心に関する話題が尽きない。一方、食の基である農業の生産者も高齢化や農家の減少、輸入品の激増などの重い課題に悩んでいる。そんな中、「新鮮・安全・安心な農産物『かわさきそだち』」を農地・農業が少ない南部地区の市民に知ってもらうイベントとして「第2回かわさき地産地消フェア」が、川崎地下街アゼリアで開かれた。開会式では、主催者側として阿部川崎市長、立川セレサ川崎農協副組合長がフェアの趣旨と来場者などに謝辞を述べ、共催の山田川崎商工会議所会頭が、「市の農業、産業の活性化にご協力を!」と呼びかけた。来賓として友好都市の長野県富士見町の小林町長も駆けつけ、「我が町の高原野菜をどうぞ、特に地元の富士見高校養蜂部が製造した日本蜜蜂の蜂蜜入りジュースがお勧めです」、とPRを兼ねて挨拶、蜂のコスチュームを着た女子高生も壇上に上がり花を添えた。

このフェアは、都市農業の理解と消費拡大を図るためにセレサ川崎・川崎市を主体として関係団体と構成する「かわさき地産地消推進協議会」が開いているもの。昨年に続く2回目で、夏野菜の品評会、市内の直売会グループによる野菜や鶏卵の販売、女性農業者や大型農産物直売所による加工品の販売を中心に友好都市の農産物の販売を行っている。今回も震災被災地支援の一環として招へいした福島県産品の売台も設けられ、地元産の揚げ蒲鉾やバウムクーヘンなども並んだ。いわき市から出店した女性の元気な呼び声に来場者が集まりだし、通りすがりの家族連れや旅行者なども足を止め商品を買い求めた。

「川崎の農業は、農地の宅地化や産品価格の下落などにより縮小しており、農家数は昭和60年以降の20年間に40%も減少し1,326戸にまでなった。また、就業者年齢も平成17年には65歳以上が過半になったことなどの危機感から、平成17年に市は、『市民とつくるかわさき農業の振興策』としての新生プランを策定した。しかし、その後も農地の減少は歯止めが効かない。そこで、市はお祭りなどのイベントに年間3、4回直売コーナーを出店し、『かわさきそだち』のPRに努め、昨年からは独自にこのフェアを開くことになった。」と市農業振興センターの米川振興係長が説明してくれた。
川崎の農業は市の中・北部が盛んで、15か所の共同直売所でも販売されているという。共同販売所は、生産者が持ち寄った採れたての農産物を販売するもので、いつも大盛況とのこと。しかし、良いこと尽くめではない。生産者が高齢化し、次世代に相続する時の高額な相続税のため、農地を手放すことなどから農地面積の減少が止まらないのが最大の悩み、とセレサ川崎の担当職員も同じ課題を挙げた。
間もなく青果売台の「かわさきそだち」の農産物も富士見町と福島県の産品も完売した。来場者が説明を聞いて、「商品に納得した」と満足気に買った顔が印象的だ。

さて、「地産地消」という用語は、元は昭和60年頃に生まれた官製造語らしい。当時、急激な円高ドル安になり世界各国から様々な農産品が大量に輸入され、日本の農業は大打撃を受けた。 そこで反転攻勢のために、高くても「安全で、安心で高品質」な地元のもの(域生)を食べよう(費)、そして、輸入にかかる輸送エネルギー消費を減らそう、輸入先の自然破壊をなくそうと登場したPR用語だ。あれから約30年過ぎたが、食糧自給率は減少の一途であり、FTAの相手国も拡大し、今度はTPP問題が待ち受けている。セレサ川崎の担当職員にTPP問題を聞くと、「詳しい内容がまだ分からないので、どう答えていいか、」と多くを語らなかった。
取材同伴者名:―
中村逸
シニアリポーターの感想

  川崎に限らず、日本の農林水産業は大変な岐路に立っている。安い外国産品が大量に輸入され、それに対抗すれば経営が成り立たなくなる。人口減少、高齢化、消費量減少という負のスパイラルも続いている。景気の低迷とデフレ経済から脱却できない日本社会で、どうやって活性化するのか、まだ霧の中だ。それでも早くデフレの轍から抜け出て、農林水産業が元気になり、農山漁村に活気が戻るよう官民挙げて努力している。農業の6次産業化という新しい政策も打ち出した。今回の地産地消フェアもその一つだろう。農業には食品の生産とともに、暮らしに大切な環境保全の機能や健康福祉の機能があることを知ってもらいたいともいう。「かわさきそだち」を食べて川崎の農家、農業を支援し、緑の田畑、澄んだ空気を守りたいものだ。かんばれ川崎の農業、日本の農業。