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光琳かるた
会場風景
源氏物語が誕生して1000年の時が経つ。昨年朝日新聞が行ったアンケート
「いつかは読みたい本」の第1位に選ばれ、未だ色あせることがない。世界20以上の言語に翻訳された日本を代表する長編小説。若き日のドナルド・キーン(1922~)も源氏物語に魅了され、日本文学を志したという。
「生涯この世界に関わっていきたい」と語る講師の豊田芳子さん。高校で古典の教鞭をとり、退職後、源氏物語の読書会を始める。「たった3人で始めた」会は、口コミで人数を増やし、12年後の今では7つの「源氏物語を読む会」が発足。会場もメンバーも進行度合いも様々だが、15名程が講師を囲み、しばし平安時代の世界を味わう。今回の講義は「澪標」の巻。原文を朗読後、講師の訳と解説を聞き、源氏物語を読み解いて行く。明石の姫君をめぐり、源氏と紫の上に交わされる心理劇が物語を深め、現代人の共感を誘う。「平安時代は戦乱の無い時期が長く続き、様々な文化が花開きました。」「原稿用紙にして2200枚ほどの長編小説、その内容の大きさと深さを超える物語は未だに現れていません。」「源氏物語には人生が全円的に描かれているので、現代に生きる私たちも共感できるのです。」とは講師の弁。会場は中高年の女性が多い。参加者は「けっして光源氏が好きなのではなく、この物語の世界そのものに魅了されています。」、また「いつかは読まなければいけないと、ずっと思っていた。良い機会を得ることが出来た。」との声も。
高津市民館を拠点に活動している「源氏物語を読む会」と「源氏物語『湖月会』」は、共催で「ものしり『百人一首』講座」も開催している。講師は同じ豊田芳子さん。こちらは単発講座形式で1回ごとの自由参加。4回目を終えて、毎回40名程の参加者で盛況である。「百人一首は」お正月の遊びとして誰もが一度は手に取った思い出があるだろう。講義では美しい「光琳かるた」を見ながら、一首ごとに興味深いエピソードを聞かせてくれる。
例えば「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」。この歌は、阿部仲麿が遣唐使と共に「留学生」として訪中、35年後の帰国時、送別会の席上、詠んだ歌だという。一説には初め漢詩で書かれ、後に訳されたとも。残念ながら船が座礁し、仲麿の帰国は叶わなかったが、後の時代に日本に伝えられ百人一首に収められた。
また美人として名高い小野小町。生誕地が秋田県湯沢市小野という説が主流ということで、コメの品種「あきたこまち」秋田新幹線「こまち」も彼女に由来するという。身近なエピソードを織り込みながらの講義で、あっという間に2時間が過ぎていった。
会費 源氏物語 3カ月5000円 百人一首 1講座毎に1500円
問合せ先
「源氏物語を読む会」・毎月第2金曜日 友田輝子 044-865-5574
「源氏物語『湖月会』」・毎月第4月曜日 原山桂子 044-422-5617
「ものしり『百人一首』講座」・第5週目の月曜日か金曜日
友田輝子・原山桂子
日本の文化・精神構造の大きな骨組みが、この時代に形作られたことが良く分かる。文字を獲得した人々があふれ出る心の動きを書きとめ、私たちに大きな財産として残してくれたことに感謝したい。シニアだからこそ、より深く分かる古典の世界を、今一度楽しみたい。