シニア世代の「見る」「聴こえる」の機能低下は、老後の過ごし方を一変させる。 今回「聴こえ」に企業人の使命を賭ける、株式会社「伊吹電子」の松田正雄社長を訪ねた。
同社の音声拡聴器「クリアーボイス」は、かわさき基準認証福祉製品
川崎市には優れた「福祉製品」を認証する「かわさき基準」がある。これは、高齢者、障がい者になったとしても、住み慣れたまちで、誰もが自立して楽しく安心に暮らせることを目標にした、川崎市独自の福祉製品のあり方を示した基準である。
この認証を得た製品は難関を超えた優秀な製品であるだけでなく、利用者の人格、生活の尊重なども同時に考えられている。「体の機能を補うための道具がストレスになっては意味がない」と松田社長は強調する。
「クリアーボイスは、私の生活の中から滲み出た願いから生まれたもの。母の耳が不自由となり家族との会話も減り、親子の意思疎通がうまくいかなくなったことが直接のきっかけでした」と語る松田氏。深い思いやりから誕生したボール紙製の第1・2号機はセピア色に変色しており、開発当時の体温が伝わってくる。以後平成11年からヒット商品へと成長した。
川崎市は福祉製品の開発・改良・製品化を支援している
市内の中小企業に対して福祉製品開発支援策の補助金制度がある。この制度の利用により「伊吹電子」は、下請け企業の立場と同時に、自社製品を持つ会社へと、特徴的な企業体制ができたと社長は語る。
「クリアーボイス」の携帯電話型が、各所窓口に置かれている。かわさき基準に認証され、多方面で取り上げられた結果、銀行、役所、病院等に「お買い上げで、設置」されているという。適度な大きさと、軽すぎない重さ、指先の器用さがいらないなど、シンプルな形状が利用者に喜ばれる。こうした窓口なら気軽に試聴もできる。
進化を続ける製品
同社の音声拡聴器は、鼓膜を通して聴くものと、骨伝導型の2種があり、形状もタイピン、ネックレス、ワイヤレス、イヤホン、ヘッドホーン、電話機用など多種多様。
日々新製品のアイデアをねっている松田社長は、利用者の感謝の声が一番の生きがいと話す。
販売店は「東急ハンズ川崎店」、県内の「さいかや」など。直接会社でも対応している。