冒頭「物忘れが激しくなると“わたし認知症になっちゃうのかしら”と心配される方もおられるかと思います。安心して下さい。単なる物忘れは老化による記憶力の低下です」と講師である管理栄養士髙木節子先生は明言した。受講者(男3名、女14名)の間では一瞬ホットした空気が流れた。
(財)川崎市保健衛生事業団主催による「認知症予防講座」がかわさき健康づくりセンターで行われた。内容は*認知症に関する講義*認知症予防に役立つ食材の解説*料理実習である。
認知症とは
認知症とは病名ではなく、正常であった大脳の細胞が身体の疾患が原因で壊れ、情報を分析したり、記憶したり、思い出したりする認知機能が低下したため生活が困難になった状態をいう。
認知症の種類は
*アルツハイマー型:脳内で特殊なタンパク質の異常が起こり、神経細胞が壊れ脳が委縮する。主に脳幹に異常が起こり、知能、身体全体の機能が衰える。症状は徐々に進行する。70歳前後の女性に多くみられる。アルツハイマー型は認知症発生率の50%を占めている。
*脳血管型:脳の血液障害で、血流が悪くなり神経細胞が死滅するなどして発生。脳梗塞、脳出血が引金となる。高血圧、動脈硬化症、糖尿病、高脂血症などが危険因子である。男性に多い。
*レピー小体型:主として大脳皮質の多数の神経細胞内に「レピー小体」という特殊な物質が沈着して起こる。大脳皮質全体に出現する。筋肉の収縮や幻覚(幻聴、幻視)が起きる。以上が主な認知症の種類である。
物忘れと認知症の違い(左が物忘れの状態、右が認知症の状態)
*原因は加齢による・・・・脳の病気
*忘れたことを自覚している・・・・忘れたことを理解できない
*体験したことの一部を忘れる・・・・体験したこと自体を忘れる
*何を食べたか忘れる・・・・食べたこと自体を忘れる
*探し物は努力して見つけようとする・・・・探し物は誰かに盗まれたと思う
違いの一部を紹介した。
認知症予防に役立つ食材
認知症を予防するには脳の機能を上げる魚と野菜を中心に、様々な食品をまんべんなく摂ることが効果的。栄養バランスの良い食事をすることは生活習慣病の予防のみならず認知症予防に役立つ。予防に役立つ食材を挙げると
*卵(脳の記憶形成を助ける)*レバー(記憶力・集中力を高める)*ごま(血圧を安定させる)*しいたけ(血圧を下げる)*玉ねぎ(血液をサラサラにし血栓を防ぐ)*コーヒー(神経細胞を活性化)*背の青い魚(血流をよくし血管障害を予防)その他ナッツ、大豆製品、焼きニンニク等などがある。
認知症予防に役立つ料理実習
調理実習は3班に分かれて、管理栄養士梁木廣子先生の指導のもと行われた。料理は4品。いわしの蒲焼丼、トマトの山かけ、豆腐入りかき玉スープ、りんごの赤ワインゼリーである。小・中学校の調理実習のような雰囲気で皆さん楽しそうに調理していた。
最後に髙木先生は「食生活の改善も大切ですが、同時に常日頃から、運動、笑い、チャレンジすることに意をもちいて下さい。これが認知症予防の秘訣です」と締めくくられた。
参加者の感想
「物忘れと認知症の違いが分かり安心した」「認知症の仕組み、食材を活かした予防対策
など参考になった」「調理した4品はどれも美味しかった。満足しました」等などの感想が寄せられ有意義な講座だった。
調理風景
完成した料理
食事風景
リポーターの感想
理論と実践があり興味が持てた。食材に注意するだけでなく、運動する、笑いが出る生き方をする、前向きにチャレンジして行くなどを実行していき、認知症予防に努めていきたいと思った。