多くの人が、せめて雲が切れよと願ったに違いないが、その夜は雨だった。江戸三大祭りのひとつ山王祭が行なわれる「日枝神社」の境内には、およそ千名の人が訪れた。昭和43年以来続いている「中秋管弦祭」が18時より行なわれる。
日枝神社では、恒例の祭礼や諸祭典には欠かさず雅楽を奏でている。中でも「中秋管弦祭」は長い伝統に培われた雅楽を正しく伝え、神の大前に奏でまつり、万民の和楽を祈り、神慮(しんりょ*天子のこころ)を和める楽典として毎年行われている。※社中発行資料参考
本殿はライトアップされ闇夜に浮かび、雨にけむる高層ビルも「笙」の響きの借景となる。月はない。本殿内で行われている雅楽や舞も、人垣でちらりとも見えない。だが、古式の豊かさ、境内に響き渡る悠久の音色は、たたずむ人々に、鎮守の森にと、染み入るかのようだった。
中秋の名月とは旧暦で8月15日の十五夜のこと。満月とは限らない。今年は翌日の9日が満月であり、来年の十五夜は9月27日だそうである。月の軌道は円ではないので、中秋の名月と満月は1~2日ずれる。次回満月と重なるのは8年後だという。日枝神社の隣は都内有数の繁華街赤坂であるが、「中秋管弦祭」では優美な体験ができる。来年は9月27日におこなわれる。
チケットは直接社務所にて購入。3,000円。発売時期など詳しくは電話で。当日券もある。
日枝神社電話03-3581-2471