川が繋ぐ地域・流域
全五回の講座で、一回目(11/20)は、地元の和光大学心理教育学科教授の岩本陽児先生が講師である。岩本先生は、生涯学習や実践的環境教育の指導を行いながら国際学術交流にも努める傍ら、学外では食のアドバイザーとして活躍され、学生教育の一環で学内に『和光畑』を作ってしまったほどである。「最近は、学外活動が忙しくなって・・・」と漏らしておられた。
今回の講座では、参加者が3班に分かれて作業しており、それぞれ「禅師丸柿」、「岡上キュウリ」、「岡上トマト」と、地元特産の野菜や果物の名前が付けられている。参加者は18名、ほとんどが地元のシニアである。
先生が講義の中で言われた「流域思考」という考え方は、慶応大学の岸由二先生(現、名誉教授)が提唱したもので、この場合は「川はその流域の土地を繋ぎながら海へと注ぎ、流域生態系の作物や魚を育んでくれる」というものだ。岡上には鶴見川が流れ、豊かな農作物が育ち、穏やかな田園風景が広がっている。
今回は地元の野菜と、流域(鶴見川)でつながっている東京湾・船橋の魚(ブリ、スズキ)を使った料理で、塩仕立てのスズキ汁、味噌仕立てのブリ汁、ブリ大根、刺身、アジの開き、大根おろし、漬物、土鍋ご飯と盛りだくさんのメニューである。スズキは最も骨の固い魚だそうで、初めて魚を捌くという男性参加者は、使い慣れない出刃包丁で悪戦苦闘。大根は講義中に分館の畑から抜いてきた、まさに産地直送(地産地消)の新鮮なものだ。
やがてテーブルの上には出来上がった料理が並び、全員でいただく。予想以上のおいしさに各テーブルでは驚きと感激の声が上がった。
食事の合間には、苦労話などに花が咲き、つかの間ではあるが、参加者に連帯感のようなものが出てきたようだ。講座を通して、参加者同士の繋がりを育むことも、岩本先生のもくろみだったようだ。
地元の食文化
三回目(12/4)から五回目(12/18)は、「神奈川県ふるさとの生活技術指導士」として活躍している山田美智子さんを講師に迎えての、地元の食材を使った料理実習の数々。
農産物加工技術を受け継いでいくために、神奈川県では加工品をつくる農家を「ふるさとの生活技術指導士」として認定し、その技と味を伝える活動をしている。
山田さんは、ご自身で加工された漬物などを、セレサモスなどの直売場にも出荷されており、評判を呼んでいる。
三回目は地粉を使った餃子、四回目、五回目はそれぞれ大根、人参を使った正月料理がテーマである。
餃子は皮から作り具を包んで作るが、山田さんのようには上手く包めない。焼き餃子と水餃子を作った。
四回目は、桂むきの大根で油揚げを巻き込む年輪大根を作り、他には柿なます、さつまいもと小豆のきんつばを作った。
五回目は、細切りのするめイカと人参を混ぜたイカ人参と、ゆず巻き大根、小松菜のグリーンケーキを作った。山田さんの丁寧な指導が印象に残る。
参加した女性たちは、「新しい料理を教えてもらった」「こんなに簡単に出来るんだ」などと感想を述べていた。
因みに二回目は、地元の納豆工場の見学だった。
出来上がった料理
地元の食文化を伝承する山田さん
一心に料理に集中する参加者
日頃料理を殆どしない私にとって、料理の取材は鬼門とも言える面があるが、今回の講座は「料理法よりも食文化を楽しむ」ことが主体なので、あえて参加してみた。
岩本先生、山田さんともに気さくに指導していただけたので、参加者も和気あいあいと楽しめたようだ。あまり料理には参加できなかったが、美味しくいただけて、よかったと思う。