ハミング場面で持参のロールピアノで伴奏する先生
大声で群読する生徒と担当の畠山さん
合間にホレッと小気味よく掛け声・・
3月9日、5回の短期講座「群読」も、最終回となった。
講師は元校長の青木信雄先生88歳。万葉集まで到達しなかったが、古典群読の最高峰「平家物語」巻の第六より「小督の局」を群読した。黒田節の第2番「想夫恋」である。
◎群読とは掛け合い
「音楽に合唱があるように、群読はことばのコーラスだ。例えば力強く堂々と読みたいとき、にぎやかな感じを出したい時も、一人では盛り上がらない。複数の声が響き合い、ハモる心地よさ。ここに群読の楽しさが生まれる」と先生は話された。
◎お小言に苦笑い
シニア23人の生徒は4班に分かれた。ソロのパートは交代で配役し、コーラスは班全員。次々と班が加わり、ついに全体で読み上げると迫力が増していく。
谷川俊太郎作「いっぱい」が、ソロ対全員コーラスの掛け合いで始まった。
群読後、先生はしばし沈思した。やや一拍おいて「あのさぁ~ちゃんと矢印付けてるだろ・・しっかり読んでよ」
北原白秋作「おまつり」のわっしょい!わっしょい!の掛け声では、持参の拍子木を打ち鳴らし、ホレッと合いの手を入れる。全員の声がリズミカルに室内に響き合った。
◎群読の代表作、山田今次作「あめ」は、時間切れでコーラスだけとなった。
「・・あめはざんざん ざかざか ざかざか/ほったてごやを ねらって たたく/ぼくらの くらしを びしびし たたく・・」
叩き付ける土砂降りの雨にも、負けるもんかという力強い詩。小学校高学年なら、大喜びでやってくれたが」と、先生も残念そうな様子だった。
◎最後に先生は「継続は力なり!シニアは多少テンポが遅れてもいい。無理せず、焦らず細く長く好きなことを続けて欲しい」と生徒たちにエールを送った。
◎生徒から「夫を亡くしてから、一日中、一言も話さないことがあった。久しぶりに大声で詩を読んだり、周りの皆さんとおしゃべりもできて、楽しかった」「ハミングの場面で、先生が持参のロールピアノで伴奏し、驚いた」「普段使わない言葉が多く、読みにくかった」「全員で一斉に読むと思っていたら、ソロに戸惑った」「早口な読みに追いつけなかった」「5回では短かすぎた」などの声があった。
◎青木先生の名言集
・活舌練習で、言いにくい言葉が並び、上手く舌が回らない。「慣れると上手く言える様になる。頭は楽をしたがるから、自分を追い込んでいかないと呆けが加速する」
・「話し言葉は瞬時に消える。何気なく発した言葉が、相手の心にグサッと刺さり、一生消えない。言葉は命である」
記者の感想
親子ほどの年齢差がある先生から、やんわりお小言を頂戴しながら、大声で読み続けた。リズムに乗ると面白さにのめり込んだ。
早速、国会図書館で、知盛「平家物語」による群読をLPレコードで聴いた。脚本は木下順二で、山本安英、野村万作らプロ7名の読み手が高らかに堂々とした声で読む。緩急や抑揚もあり、目を閉じると場面が浮かび上がる。群読の奥深さに圧倒された。
吉川 眞沙美