川崎市が“花と緑と史跡を訪ねる散歩道”の第1号に指定した「多摩自然遊歩道」は、JR稲田堤駅から小田急線読売ランド前駅にかけての4.2kmのコースだ。緑が茂る初夏の遊歩道を散策した。コース案内は川崎市教育委員会のホームページやインターネットの情報を参考にした。
薬師堂
JR稲田堤駅から10分ほど歩くと、1195年に建立された極楽寺の後身と伝えられている「薬師堂」に着く。毎年9月の日曜日(今年は9月13日)に県指定無形民俗文化財の「菅の獅子舞」が舞われ「小学生による奉納相撲」も行われる。
指月橋
旧三沢川沿いに10分ほど歩くと、頼朝に追われた義経がここで月を見たと伝えられる指月橋に着く。今自分が立っている場所に、数百年前に義経も立っていたと思うと妙な親近感を覚える。
里山と小沢城址
指月橋から100mほど行くと、左手に小沢城址への登り口が見える。小沢城は、鎌倉時代北の防衛線として重要な役割を果たした山城だ。
木漏れ日を浴びながらしばらく山道を登ると、城の中心部、古井戸、空堀、馬場、物見台など遺構に出会う。ボランティア団体「小沢城址里山の会」により設置された案内板が歴史や由来を説明してくれる。
時々聞こえる「ホーホケキョ」の鳴き声が心地良い。「チョットコイ、チョットコイ」はコジュケイ。たまに聞こえる「トッキョキョカキョク(特許許可局)」はホトトギスだ。
地元の子供が、「夏はここでカブトムシやクワガタが捕れるよ」と自慢そうに話してくれた。
翌日、知人の全国森林インストラクターの松井さんに話を聞いた。「この辺りはヤマガラ、エナガ、コガラ、アオゲラなど野鳥が多く生息しているので、是非楽しんでください。里山の保全は地元の有志・団体が、常緑樹を伐採し落葉樹を植栽するなど地道な活動により保たれています。」とのこと。
寿福寺・川崎市農業技術センター(旧フルーツパーク)・さくら公園
小沢城址を後に、住宅街を抜けると、大みそかには除夜の鐘を撞くことができる寿福寺に着く。5分ほどで東京を見渡せる展望室がある川崎市農業技術センターだ。ここからの400mほどの道路の両側は、桜並木が植えられ、花見の名所になっている。途中、右手にあるのが「さくら公園」だ。
多摩美(たまみ)ふれあいの森
5分ほどで「多摩美ふれあいの森」に入る。ここもクヌギ、ミズキ、コナラなどの雑木林が続く里山だ。ここでも野鳥の声が聞こえる。山道を20分ほど歩くと読売ランド前駅に出る。
小沢城址石碑
小沢城中心部と案内板
川崎市農業技術センター
案内によると2~3時間コースとなっているが、4時間程かけた方が楽しめる。これからの季節、飲料水と帽子は必携だ。身近にある貴重な里山は、様々な人たちにより保護・保全されていることを実感した。一度壊された自然は元には戻らない。