川崎上空から富士を望む
日本語と英語で研修は進む
環境総合研究所内には、大気・水・放射能等様々な環境汚染物質の分析装置が設置されている。
あたりまえのこと
「罰金を払うということはないのですか」、「罰金を払う前に直してもらいます」。
これは川崎生命科学・環境研究センターで開催された研修会で、海外からの研修生の質問とそれに答えた講師とのやりとりだ。工場が環境汚染物質排出基準を超える状態を引き起こしたとき、川崎市は即刻改善の指示を出す。企業はそれにすぐ対応する。
質問者は、汚染物質の排出量を基準値まで引き下げるのには相当の時間を要し、最終的に罰金を支払うことになるのが普通と考えたようだ。
必ず解決する
2015年7月14日、空は富士を望めるほどくっきりと晴れわたり、風が強いが爽やかな朝となった。
今回の研修は、大規模開発事業等が行われる場合、環境への影響を事前に調べることにより環境悪化を未然に防ぎ、環境への配慮を適切に行う能力を養う目的で開催された。アジア、中近東、アフリカの諸国から18人が参加した。
研修は、川崎市環境局の各部署の職員が講師となり、大気に関する公害防止というテーマから始まった。内容は川崎が直面した公害問題に市と企業がどう取り組んだかということを中心としたものであった。
1960年の川崎市公害防止条例制定、それに伴う各種法令の整備、工場・事業場の監視・指導・規制。川崎市と事業者との大気汚染防止協定の締結。智恵と時間をかけての取り組みが続いた。
次に水環境の健全化へと展開した。どのテーマも公害の発生原因を取り除き、きれいな空気や水を取り戻すまでに並々ならぬ時間と努力を必要としたことがわかる。
ひとつの研修テーマが終わるごとに研修性からは大きな拍手が送られた。
種を守ること 人を守ること
アフリカのマラウィから参加した女性の環境地方官に聞いた。自国の大規模開発事業による環境への影響を事前に調査することにより、予測・評価する手法を学びに川崎へ来たとのことである。
特にアフリカという地域は、野生動物の宝庫といわれるほど多種多様な動植物が生息している。「貴重種の保護ということは私たちにとって最も重要な課題なのです」と真剣な眼差しを返してくれた。
「川崎では、市民意識の高さと自治体との連携の強さ、問題解決にあたってのポジティブで粘り強いこころを学びました」と最後に語ってくれた。
人はこれまで人を害するという問題を引き起こしてきた。時間がかかるが同じ気持ちを持ち続け事に当たれば解決できる。そして今度は同じことをくり返さない。それぞれのお国で川崎の例を参考にしていただければ幸いである。