最近、知人や地元民だった幼馴染み達が、小杉が見知らぬ街になったと嘆く。
原因は、平成16年から始まった駅周辺の再開発である。現在100メートル超の高層ビル9棟、建設中3棟と、未だに建設ラッシュが続いている。
この武蔵小杉を舞台にした「身近な景観を撮ってフォトブックをつくろう」に参加した。参加者19名は、歩きながら街並みを撮影し、作品の発表と投票等のワークショップを行なった。
主催は川崎市まちづくり局。以前から景観資源の発見や認識を目的に、バスツアー等を実施していた。昨年度は、写真撮影(市全体を対象、写真は事前提出)とワークショップを行なってフォトブックを作成した。今年は小杉周辺に限定し、撮影とワークショップを同日に行って、フォトブックを作製することとした。
・景観と風景の違いとは
景観とは「街並みや人間を取り巻く環境の眺め」で、風景とは「広域の地勢や文化を背負ったもの」。完成するまでに景観10年、風景100年、風土1000年かかるとの説明があった。
まち歩き
いざ撮影会!ルールは、私のお気に入りや好きな場所、絵になる場所、秘密の場所を往復90分間で見つけて撮影する。
スタッフの道案内で、桜の名所である二ヶ領用水沿いを8人で歩き始めた。「駅前がすっかり都会になり、落ち着かなかった」と話す女性は、ようやく携帯でひなびた神社をパチリ。また数台のカメラで川を覗いているものだから、通行人の母子が飛んできて「何があったの?」。母親からこの先にカモがいると聞いた参加者達もシャッターチャンスと張り切りだした。
作品の発表会が始まった。撮影した思いを1人ずつ語り、景観の専門家である慶応大学教授石川初氏が作品を講評した。「昔、母親の退院費が足りず、質屋にコートを預けた。通りすがりにあった当時の神社を見つけ、高層ビルをバックに撮った」との男性に、そのコートの安否を問う先生。軽妙なコメントにどっと笑い声が上がった。別の参加者は「高層ビルに囲まれた中、青空を見上げて、開放感が沸いてきた」。先生は「駅周辺は高層と中層のビルを配置し、田んぼサイズの空間を確保して、圧迫感を軽減している」「良い景観写真には、情報発信する景観と受け手の間に対話がある」と講評した。
本殿外れに並ぶ二社の神社と赤い鳥居(青柳和美さん提供)
コーヒー片手で「さて、どれを選ぼうか」
暖冬の師走。紅葉のトンネルがまだあった。
記者の感想
景観?フォトブック?聞きなれない言葉に戸惑いながら、生まれ育った故郷というだけで、即応募!
林立するタワーマンションに圧倒されながら、ホッとする場所も見つけた。まち歩きの面白さを、幼馴染み達にも教えたくなった。