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幾多の困難を乗り越えて~伝承民族芸能

取材日 2016年01月19日(火)

28年高津区賀詞交換会にて(写真提供・高津区役所)
28年高津区賀詞交換会にて(写真提供・高津区役所)
諏訪神社大例祭の山車にて5人囃子
諏訪神社大例祭の山車にて5人囃子
 
 「口承、つまり文字を使わないのが我々の伝承法」と語るのは「諏訪神社祭りばやし保存会」会長の鈴木伸一(72)さん。高津区諏訪に明治初頭から現在へ継承されている。
川崎市の民族芸能保存協会には34団体が登録され、それぞれが後継者を育成しながら腕を磨いている。
 
地元東高津小学校にて課外授業
  毎年1回、小学3年生を対象に祭りばやしを紹介し、その歴史や和楽器に触れる課外授業を行っている。7年続いているというから、そこに学校側の信頼もうかがえる。珍しさもあいまって、子どもたちは眼を輝かすという。
 
維持保存のために門付(かどづけ)を
  昭和30年代半ば頃までは各地域におはやし連があったが、その後は急速に減り続け高津区では2団体だけとなった。その1つも近年復活をしたばかりというから、100数十年の継続は幾多の困難を乗り超えた結果である。   昭和50年代に入ったころ、保存活動のために正月の獅子舞を、2組編成で100軒くらい回り(門付という)祝儀を集めた。正月の三が日は家で過ごすという時代の終わりとともに、門付も終わりを告げた。その後の諏訪には、笛の名手がいたので消滅の危機を免れた。笛吹きがいないと、おはやしが絶える要因になってしまうという。現会長も笛の名手だ。先代名手は舞の心得もあり、米寿を越えた昨今これも継承を急がねばならない。
 
練習は毎日曜日に2時間半
  会員は19名。全員が地元の縁者だ。諏訪神社の氏子会館が練習場。新門弟と言われる4名も10年の修行者だ。その昔は他村に芸が漏れないよう一子相伝の時代もあったとか。 門付けのなくなった現代の1月は、各界の新年会に引っ張りだこの盛況だ。ゆっくりするいとまがないと会長は話すが、心底おはやしを楽しみ、保存に人生を傾ける覚悟の強さを感じた。
 今年の3月6日には幸区の市民館で「第38回川崎市民俗芸能発表会」が行われる。
https://mykoho.jp/article/

おはやし豆知識
トンビ(笛)・おおと(大太鼓)・芯(中太鼓)・流れ(小太鼓)・四助(かね)とで5人囃子。舞手2名と黒子役を加えて8名で組むこともある。
 笛は音色とは言わず笛の音〆(ねじめ)という。 笛は1本笛~6本笛がある。本数ではなく、笛の径を表す。数字が大きいほど細く高い音が出るが、低い音の太竿は肺活量が必要で難しいとされる。

 
 
師匠(会長右)と初稽古 古タイヤを利用

師匠(会長右)と初稽古 古タイヤを利用

最年少の女性門弟。先輩と笛の手合わせ

最年少の女性門弟。先輩と笛の手合わせ

27年高津区賀詞交換会

27年高津区賀詞交換会

高津区諏訪 保存会会長鈴木伸一さん宅
石渡一美
シニアリポーターの感想

おはやしは難しい。洋式の音楽感覚でうかがっていても、とても演奏の説明にはついていけない。後継者があることが素晴らしいと思う。学校でならった譜面でいうところの一小節がとても長いし、リズムも素人には不規則に聞こえる。それを口承で教わるのだから、後継者のかなりの鍛錬が想像できる。

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