小正月(1月の15・16日頃)に、無病息災・五穀豊穣を祝うどんと焼きの習わしが日本の各地で見られる。川崎市立下布田小学校の校庭でも、どんと焼きが永年続いて来た。 多摩区にあるこの小学校では、地元の造園会社社長小川米夫(65歳)さんがPTA会長だった23年前に始まり、学校を中心に小川さんが住む地域が一体となり作り上げて来た。この壮大な風景を一目見ようと1000人以上が集まり賑わう。やぐらを組むには、今では手に入りにくい孟宗竹(もうそうちく)・わら・だるま飾り・お正月飾り等の材料と、6メートルのやぐらを組む高度な技術が必要だ。しかし周辺は開発が進み、これらの材料の調達は難しくなり今回をもって幕を閉じる事になった。稲わらは、横浜市内の農家に分けてもらい孟宗竹(30本)は、小川さん宅の提供で立派なやぐらが出来ていた。
・学校では
赤い炎が燃え尽きたところで、子ども代表や地域の人が竹の先に切り餅をさして焼く。火の回りを歩いて火の尊さ・怖さ・優しさを体験する。校舎内には、どんと焼きの由来や様子を表現した掲示物もある。だるまが焼けはじくドーンに驚いたともあった。この貴重な体験をとおして地域の風習や伝統を3年生の総合的な学習として学んでいる。ご利益があると言うどんと焼の餅が参観者全員に配られた。その数もすごいものだ。
・感謝の会
いよいよ最後となる校庭では、大変お世話になった小川さんに感謝を述べる子ども達主催の感謝の会があった。各学年の代表が「行事が終わるのはさびしい」とか「今までどうもありがとう」等の思いを述べた。小川さんは頬を赤らめ「この地域で世代を超えて交流できる場でもあったので、無くなるのは寂しいし残念。」としみじみと語る。卯木校長先生は、23年間培われた「どんと焼の歴史」を映像などにし次世代に語り継いでいきますと話された。運動場には、最後と聴いて集まった卒業生が、突然の再会を喜んでいる風景があちこちにあった。
切り餅をおきびにかざして焼く
感謝の会
子どもの作品
伝統芸能を継続することは、本当に難しい事だとつくづく思った。下布田小が23年間も続けられたことは、地域の支援が大であった。ご苦労様でした。